これは、僕が体験した話です。
幼少の頃、沖縄にいたとき、おばぁから「夕方の帰り道に知らない人が後ろから声をかけてきても振り返っちゃいけないよ。約束してちょうだいね。」と優しい中にも真剣な声で言ってきたことを今でも覚えています。
兄や従兄弟たちと森や公園で遊んで帰る時、おばぁとサトウキビ畑に行った帰り道によく声をかけられることがありました。
「ねー。」とか「あのー。」とかそんな声が聞こえるので、反射的に声のする方を向いてしまいました。
するとそこには、誰もいません。
ただ、声だけがずっと頭の中に響いています。
「やっぱり聞こえてるんだ。」って。。。。
怖くなって、おばぁのところに助けを求めて走りました。
おばぁはいつも温かく迎えて「怖かったね。大丈夫だよ。おばぁが追い出してあげようね。」って言って、昔の方言みたいな言葉を呟きました。。。
そんな体験を何回か体験すると声をかけられても振り向かなくなりました。
すると、声をかけられることもなく僕も次第に忘れていきました。
内地に引っ越してからはそんな体験もしなくなりました。
数十年が経ちおばぁも天国に旅立ってしまいました。
僕が看護師になり同僚と沖縄旅行に行ったときに、同僚から「シュノーケリングしながら洞窟にいける所があるって」と楽しそうに言われました。
あまり気乗りはしなかったんですが、同僚の圧に押されて行くことになりました。
僕たち以外にも数名観光客がいたので安心しました。
洞窟の中は神秘的に水面が反射してキラキラとしていました。同僚は「来てよかったね。」と満面な笑みを浮かべていました。洞窟の奥に陸地があったので、そこで少し休んでから帰ることになりました。
同僚が僕の前を泳いでいました。
僕は、誰かに肩を叩かれ「助けてくれ。」と声が聞こえ、振り返ると誰もいませんでした。
あんなに観光客がいたのに、気づくと僕が最後尾でした。
僕は気のせいかと思い、その場をやり過ごしました。
沖縄旅行から帰り、数ヶ月後に叔母が家にきてました。叔母はおばぁと同じ霊感がありました。
僕が叔母に会うと少し表情が曇りました。
叔母から「久しぶりね。最近、疲れたりしてない?辛くない?」と言ってきました。
いきなり変なこと聞くなー。と思いつつ叔母に「忙しいよ。でも、最近は楽しいよ」と言うと、叔母が「そう。変なこと聞くけど。最近どこか変な所に行かなかった?」と言われたので、沖縄旅行に同僚と言ったことを伝えました。
すると、叔母が静かな声で「ねー、はーちゃん。おばぁが昔にあなたに約束してって言ったことを覚えてる?」と言ってきました。
僕はずっと忘れていましたが、声がしても振り向いちゃいけないと約束したことを思い出しました。
叔母から「はーちゃん。洞窟で声をかけられて振り返っちゃったわね。そうね。困ったわね。あなたに兵隊の霊が取り憑いてるの。助けて欲しくて声をかけたら、たまたまあなたが振り向いたから憑いてきちゃったのね。看護師だしなおさらよね。
だけど、困ったわね。あなたに憑いて離れようとしないのよ。」
僕は恐怖に陥りましたが、微かな記憶の中でおばぁが除霊をしてくれたこと思い出しました。
僕は「叔母さん!昔おばぁが除霊してくれたんだ。方言みたいなことを呟いて。あれできないの?」と頼むと、、、
叔母は困った顔をして「はーちゃん。実はね、おばぁも除霊はできてないの。悪さをしないようにご先祖様にお願いをしてただけなの。この兵隊の霊は、あなたを取り殺そうとしてる。もし、はーちゃんが仕事で追い詰められて辛くなっても命は投げ出しちゃダメよ。あと、気を緩めたりしてはダメよ。アレがあなたを見てるからね。辛い時はご先祖様に助けを求めなさい。きっとおばぁが助けてくれるわ。それでも辛いときには心を決めなさい。」と淡々と叔母は話しました。
衝撃と恐怖といろんな感情が混じり合って僕の中に入り込んできました。
それからは先祖供養を忘れずに、叔母に言われたことを守り日々生活しています。
ここでみなさんに知ってほしかったのは、幽霊より怖いのは人間であるということ。
叔母から最後に「あの洞窟に幽霊が出るってあなたのお友達は知っていたのね。だから、あなたを連れ出したのね。あまりその子と仲良くしない方がいいわね。あなたを蹴落とそうとしてるのが視えるわ。だけど、お友達にも洞窟で別のモノが憑いてきてるわね。」と言われました。
数ヶ月後、同僚は急に病院を辞めて音信不通になりました。今はどこでなにをしているか分かりません。
みなさんも、背後からの声には振り返らないように注意してください。
おわり